秘密に包まれた場所が限定的に公開されることは、魅力的ですよね。
京都御所や皇居乾通りのように、普段は入ることができない場所の一般公開には特別な期待が高まります。
中部地方の春日井市に位置する愛岐トンネル群も、そうした場所の一つです。
この旧国鉄中央線のトンネル群は通常、施錠されており一般の立ち入りは禁止されていますが、年に2回の春と秋に限り開放されます。
訪れるならば、春には新緑が眩しい景色を、秋にはカエデの紅葉が織りなす赤、黄、緑のコントラストが美しい景色を歩きながら楽しむことができます。
この記事では、愛岐トンネル群へのアクセス方法、駐車場情報、2024年秋の特別公開日、持って行くと便利なもの、トイレの情報、そしてその歴史や見どころを詳しくご紹介します。
年に2回のこの貴重な機会に、ぜひトンネル探検を楽しんでみてください。
2024年秋、愛岐トンネル群の特別公開情報
特別公開日程
- 期間: 2024年11月23日(土曜日)から12月1日(日曜日)
- 開門時間: 朝9時30分から15時まで(最終入場は14時)
- 入場料: 大人100円、小学生以下は無料
- 注意: ペットの入場は禁止です。悪天候時は中止となる場合があります。また、新型コロナウイルスの影響により変更の可能性があります。
愛岐トンネル群では、1号から14号トンネルのうち、3号から6号トンネルの約1.7キロメートルが公開されます。
持ち物の推奨
- 足元は石が多く歩きづらいため、スニーカーなどの歩きやすい靴を推奨します。ベビーカーの持ち込みは避けた方が良いでしょう。
- トンネル内は暗くて見づらい場所が多いため、懐中電灯を持参すると安全です。
- 食べ物や飲み物は現地で販売されていますが、自分でお弁当を持参することも可能です。食事をするためのテーブルやイスが設置されており、川辺でのピクニックも楽しめます。
トンネル探索の全体の所要時間は、ゆっくりと歩いて往復で約2時間です。
美しい自然の中、リラックスして歩くことができるでしょう。
愛岐トンネル群へのアクセス方法
電車でのアクセス
愛岐トンネル群へは名古屋駅からJR中央線を利用します。
多治見または中津川方面行きの電車に乗り、「定光寺駅」で降ります。
名古屋からは約40分の距離にあります。
定光寺駅は無人駅で、改札口がなく、入口と出口に設置されている簡易改札機でICカードを使ってタッチする形で出入りします。
事前にICカードのチャージが必要ですので、注意してください。
駐車場情報
愛岐トンネル群周辺に専用の駐車場は設けられておらず、定光寺駅の周辺にも公共の駐車スペースはありません。
しかし、川を挟んだ対岸に位置する瀬戸市の定光寺エリアには、定光寺公園隣の派出所やお墓の管理事務所付近に無料で利用できる駐車スペースがあります。
ここから定光寺駅までは歩いて約20〜30分かかります。
帰りは上り坂が続くので、特に歩行には気を付ける必要があります。
また、中央線沿いに位置する他の駅(例えば高蔵寺駅など)近くにも有料駐車場があり、そこから電車を利用して愛岐トンネル群へ向かう方法も便利です。
愛岐トンネル群の歴史と観光の魅力
愛岐トンネル群の背景と、その魅力的な見どころについて、入口から県境駅に至るまでの情報を含め、便利なトイレ情報もお伝えします。
愛岐トンネル群の歴史
1900年(明治33年)に開通した中央線は、春日井市の高蔵寺駅から岐阜県多治見市の多治見駅を結ぶルートに沿って、14のトンネルが手作業で造られました。
この路線は中部地方の経済発展に大きく寄与しましたが、単線であったため、戦後の急速な経済成長に適応することが困難となり、新たな路線に置き換えられ、1966年(昭和41年)には廃線となりました。
レールと枕木が撤去された後、廃線は自然に覆われて忘れ去られていましたが、2005年(平成17年)に明治時代の赤レンガを使ったイベントで、地元の高齢者が昔の話をしたことがきっかけで、廃線とそのトンネルが再発見されました。
その後の調査により、約40年ぶりにこれらのトンネルが再び世に知られることとなり、2016年には産業遺産として登録有形文化財に指定されました。
現在では、年2回、この歴史的なトンネル群が一般公開されており、定光寺の入り口から約1.7キロメートルの区間が訪れることができます。
次回の特別公開は2024年11月23日(土)から12月1日(日)の間に予定されています。
定光寺駅から愛岐トンネル入口への道のり
定光寺駅は一風変わった立地にあり、崖のへりにしがみつくように建てられています。
この秘境駅から下りホームにアクセスするには、狭い階段を下りてトンネルを通り抜け、線路の下を横切って外に出ます。
駅を出たら、多治見方向に道なりに進むと、トンネルの入口に辿り着きます。
この入口は日曜日の9時半オープンで、開門前から多くの人々が列を作るほどの人気です。
普段は使用されていない狭い階段を登ると、入場料を支払う場所があります。
ここから約1.7キロメートルの廃線跡の散策が始まります。
散策を助けるために、竹製の歩行棒の貸し出しも行われています。
3号トンネルから竹林駅への区間
3号トンネルの入口では、実物大の蒸気機関車の幕が飾られており、トンネル内部には灯りが点されています。
トンネルを抜けると、古いレールを再利用した防石柵があります。
これらの柵には、日本やアメリカの製鉄所の刻印が見られます。
また、トンネル近くには「廃線の落とし物」展示があり、古い犬釘や工具が展示されています。
この先には竹林広場があり、廃材で作られた東屋で有料のお茶が提供されています。
川沿いには、子供向けの遊具としてターザンブランコやボルダリングが設置されており、特にブランコはマルシェ広場の手前にもあります。
また、4号トンネルの手前で道が分かれ、3号トンネルは一方通行であるため注意が必要です。
マルシェ駅から4号トンネル
4号トンネルは長さ76メートルで、3分おきに蒸気機関車の汽笛のような音が鳴り響き、まるで機関車が追いかけてくるかのような迫力を感じさせます。
その音には上りと下りの違いがあるらしいのですが、実際にはその区別は難しいです。
トンネルを抜けると、目の前に広がるのは「大もみじ広場」で、そこには愛知県で最も大きなもみじの木が見事に紅葉しています。
愛岐トンネル大モミジ広場
ここにある大モミジは、高さ約18メートル、推定樹齢98から110年とされています。
トンネル工事の際に切り倒された大木の切り株から新芽が出て、現在の姿に成長しました。
その見事な生命力から「三四五の大もみじ」と名付けられ、見る角度によっては3本、4本、5本と異なって見えることが特徴です。
その近くにはゴリラの横顔を模した「ゴリラ岩」があり、その上には観音様のように見える巨大な「トンガリ岩」が聳え立っています。
この岩の下には鳥居があり、その道を登ると拝むことができますが、かなり急な坂道ですので注意が必要です。
マルシェ広場では、絵葉書やお弁当、お茶などが販売されており、多くの訪問者が休憩を楽しんでいます。
特に栗おこわは人気で、訪れた時はすでにほとんどのテーブルが埋まっていました。
お弁当は特に土日には昼頃には売り切れることがあるため、早めに購入することをお勧めします。
5号トンネルから県境駅への道
5号トンネルは、特異な構造の斜壁「ウィング」に支えられています。
このトンネル内には、発掘された少女のレリーフを祀る「護り稚児地蔵」が安置されています。
この地蔵は、明治時代に造られたレンガ製の祠の中で、トンネルを通る人々を静かに見守っています。
地蔵には日付と名前が刻まれているものの、その具体的な由来は不明です。
この99メートルのトンネルを抜けると、「レンガ広場」に出ます。
ここでは、C57型蒸気機関車の動輪が展示されており、この重さ3トンの大きな動輪は、人々がペダルを踏むことでゆっくりと回転します。
広場では2024年の公開期間中、フォークソングや楽器演奏などのイベントが行われる予定です。
続く6号トンネルは、全長333メートルで曲がりくねった暗闇の中を進むと、ススが壁や天井に残る壮大なトンネル内を体験できます。
このトンネルを抜けると、行き止まりの「県境広場」に到着します。
ここからは歴史的な7号トンネルが近くにありますが、まだ掘り起こされていない状態です。
もみじ山とピクニック河原
6号トンネルの入口左側には、もみじ山への山道が続いています。
ここでは、エノキ、クマノミズキ、イヌシデが一体となって育つ「三位一体の樹」を見ることができます。
これらの木々は自然の風景を形成しており、赤いレンガのトンネルを思わせる景観が広がります。
ピクニック河原への道は比較的自然のままで、木の根や滑りやすい落ち葉に注意しながら歩く必要があります。
川の内側に位置するこの場所は、大きな石が散らばる静かなエリアで、訪れる人も少ないため静かに過ごすことができます。
ここから「玉野古道」に入ることもでき、この道はかつて多治見から名古屋へ抜けるルートとして使われていましたが、中央線の工事により一部が寸断されました。
歩くことで、明治時代から変わらない愛岐渓谷の風景を楽しむことができます。
愛岐トンネル群のトイレ情報
愛岐トンネル群では、いくつかの場所にトイレが設置されています。
具体的には、トンネルの入口、マルシェ広場(男性専用)、レンガ広場、そして県境広場に簡易式の仮設トイレがあります。
定光寺駅の下部にもトイレが設けられていますが、これらの設備は数が限られており、特に混雑時は行列ができることがあるため、散策を始める前に利用することをお勧めします。
ビジターセンターの情報
愛岐トンネル群の特別公開時には、定光寺駅近くに設置される「ビジターセンター」が開設されます。
ここでは、1960年代に中央線を走っていた電車の写真や鉄道模型が展示されています。
セピア色の写真には、珍しい電車が数多く撮影されており、ビジターセンターは春と秋の特別公開の際にのみ開かれ、入場は無料です。
懐かしい雰囲気の中で、鉄道の歴史を感じることができます。
ただし、開館日時は未定なので、訪問前には最新情報を確認してください。
さいごに
愛岐トンネル群へのアクセス方法や駐車場情報、特別公開の見どころについてご紹介しました。
年々来場者数が増加しており、公開初日には2万人を超える人々が訪れるなど、非常に賑わいます。
設備には子供向けの楽しい要素も多く、ブランコや木製の楽器などが設けられているため、家族連れでも楽しめます。
快適に過ごすためにも、歩きやすい靴と懐中電灯を持参することを忘れずに、訪れてみてください。